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「相続税についてのお尋ね」が届いた方へ

 
 

ご家族が亡くなって数ヶ月後に、税務署から「相続税についてのお尋ね」という文書が届く場合があります。この税務署からの文書は、いったいどのようなものなのでしょうか?返信の義務はあるのでしょうか?

今回は、「相続税についてのお尋ね」が届いても慌てないために必要な情報をご紹介します。

【1】「相続税についてのお尋ね」は、いつ、誰に送られてくる?

「相続税についてのお尋ね」は、亡くなった人の遺産を相続する相続人に対して送られてきます。ご家族が亡くなって相続が発生してからおよそ6か月程経過した頃に送られてくる場合もあれば、相続が発生してから数年が経過した後に送られてくる場合もあります。

ここでは、「相続税についてのお尋ね」が送られてくる時期に応じた対処法と、お尋ねが送られる基準をご紹介します。

(1)相続開始後およそ6か月経過時のお尋ねの場合

相続が発生してからおよそ6か月経過時に「相続税についてのお尋ね」が届いた場合は、まだ脱税や不正が疑われているわけではありません。

「遺産の内容を確認して必要があれば相続税を申告してください」と促されている状態です。突然、税務署から文書が届くと不安になりますが、過度に心配する必要はありません。

しかし、相続税の申告期限は相続発生から10か月後であり、「お尋ね」が送られてきた時点で申告期限が迫っています。もし、申告の必要があれば急いで準備をしなければなりません。

①税務署が「お尋ね」を発送するための調査方法は・・・・。

税務署は、亡くなった人に一定以上の財産がある場合に「相続税についてのお尋ね」を発送しています。人が亡くなった場合は、まず市区町村役場に死亡届を提出しますが、届け出を受けた市区町村は、その情報を管轄の税務署へ報告することが法律で規定されています。

死亡の情報を知った税務署は、次のような資料を参考に、亡くなった人に財産がどれくらいあるかを調べます。

●被相続人の過去の確定申告書

●被相続人の固定資産課税台帳

●保険金等の支払調書(保険会社から税務署に提出)

●特定口座年間取引報告書等の支払調書(証券会社等から税務署に提出)

●その他必要に応じて法務局や金融機関等に照会して、不動産の登記情報や金融資産の状況も確認します。

これらの調査によって、税務署は、亡くなった人にどれくらいの財産があったかを把握することができます。一定以上の財産があると見込まれる場合は、相続人に「相続税についてのお尋ね」が送られます。

【「相続税についてのお尋ね」が送られるポイント】
税務署は、亡くなった被相続人の財産の状況をおおむね把握できます。
被相続人が多くの財産を保有していれば、相続税の申告が必要である被相続人が多くの財産を保有していれば、相続税の申告が必要である可能性が高く、「相続税についてのお尋ね」が発送されます。

②お尋ねが送られても、相続税の申告が必要だとは限らない。

相続税の申告は、相続した財産の総額が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に必要になります。従って相続税の申告が必要かどうかは、相続財産を全て正確に洗い出して価格を評価してみなければわかりません。それは税務署にとっても同じことであり、まずは相続財産がいくらあるかを見積もった上で、「お尋ね」という形で相続人に連絡します。

相続財産の価格を評価した結果、相続税の申告が必要ないとわかった場合は、届いた「お尋ね」に必要事項を記載して税務署に返送します。

一方、相続税の申告が必要となった場合は、速やかに申告書を作成・提出する必要があります。

(2)数年が経過した後に「お尋ね」が届いた場合

相続が発生してから数年が経過して「相続税についてのお尋ね」が届いた場合は、税務署に申告漏れをを疑われているかもしれません。この時点では、既に相続税申告の期限を過ぎていて、税務署は「相続税を申告する必要があるのに申告していないのではないか」と考えています。

相続から数年が経過して「お尋ね」が届いたという方は、すぐに当時の財産の状況を調べ直して、相続税の申告が必要かどうか再検討する必要があります。期限を過ぎて相続税を申告・納付した場合は、本来課税される相続税のほか、無申告加算税や延滞税といった罰則の税金がかかります。

(3)海外の財産も把握されている・‥。

海外に財産を移しておけば、税務署の調査から逃れられると考える人がいるかもしれませんが、税務署は海外にある財産の把握にも力を入れています。

まず100万円を超える海外送金があった場合には、金融機関から税務署に「国外送金等調書」が提出されます。さらに、平成26(2014)年1月から「国外財産調書制度」が施行されています。海外で保有する資産の合計額が5000万円を超える人は、毎年税務署に「国外財産調書」を提出しなければなりません。

これらの取り組みを通じて、国内の納税者が海外に移した資産について課税が強化されています。

(4)不動産所得者や高額納税者に「お尋ね」が届く可能性は高い

ここまでお伝えしたように、税務署は過去の確定申告の内容などから、亡くなった人に財産がどれくらいあるのかを調べます。特に、不動産オーナーは不動産所得を申告しており、所得を生み出す不動産物件が多いと推測されます。また、高額納税者は所得税を多く納めている分財産の蓄積が多いと推測されます。

従って、これらの人々は一般家庭の人に比べると「お尋ね」が送られる可能性が高いと考えられます。

【2】「相続税申告の簡易判定シート」について

「相続税についてのお尋ね」は、封書で送られ、中には「相続税申告の簡易判定シート」(「相続税の申告要否検討表」という名称を使用している国税局もあります。)」という用紙が入っています。この「相続税申告の簡易判定シート」に必要事項を記載して、税務署に返送します。

「相続税申告の簡易判定シート」は、自分で書くほか、税理士に書いてもらっても良いでしょう。遺産の内容が把握できていない場合や遺産の種類が多い場合は、税理士に相談することをお勧めします。

「相続税申告の簡易判定シート」には、次のような内容を記載します。

・亡くなった人の住所、氏名、生年月日、死亡日、職業
・相続人の氏名・続柄
・遺産(不動産)の所在地、面積、概算の評価額
・遺産(金融資産)の種類、金額
・保険金・退職手当金の金額
・その他の財産の種類、数量、金額
・生前贈与を受けた人の氏名、贈与財産の種類、金額
・負債、未払税金、葬式費用の金額
・相続財産の概算金額

【3】税務署に対する回答の義務は?無視したらどうなる?

「相続税についてのお尋ね」が届いた場合は税務署に回答を提出しておくことをお勧めします。提出する必要があるのに無視した場合は、税務調査が実施される場合があります。

(1)義務はないが、提出する方が良い

「相続税についてのお尋ね」は、あくまで税務署からの確認のお願いであり、回答を提出する義務があるわけではありません。それでも、「お尋ね」が届いた場合は回答を提出しておいた方が良いでしょう。「お尋ね」を無視して回答を怠ると、税務署にかえって疑われてしまいます。

また、既に相続税を計算して相続税がかからないことが分かった場合も、「お尋ね」には回答することをおすすめします。税務署から「お尋ね」が送られてきたのは、相続税を申告する義務があると見込まれているからです。「お尋ね」に回答して相続税がかからないことを証明しておきましょう!

(2)既に申告の準備をしている場合は回答不要

既に税理士に相談していて相続税の申告を準備している場合は、「お尋ね」には回答しなくて構いません。そのまま申告の準備を進め、所定の期限(相続発生から10か月以内)に申告書を提出しましょう!

(3)無視したらどうなる?

「相続税についてのお尋ね」の回答を提出しなければ、税務署は「この人は怪しい」と感じて、税務調査をしようと判断するかもしれません。本当に何も問題がなければ、「お尋ね」を無視するなど反抗的な態度はとらないでしょう。「お尋ね」を提出しなかった場合は、何か隠していると思われても不思議ではありません。

税務調査が実施されると80%を超える割合で追徴課税が行われます。また、調査官が自宅を訪ねて来るため心身にも負担もかかります。「お尋ね」が届いた場合は、無視しないで回答を提出しましょう!

【4】回答・提出期限はあるの?

「相続税についてのお尋ね」に対する回答を提出する場合は、送られてきた文書に記載されている回答期限までに届くように返送しましょう。

「お尋ね」に回答する代わりに相続税を申告する場合も、送られてきた文書に記載されている申告期限に間に合うように準備を始めましょう!なお、相続税発生後数年が経過してから「お尋ね」が届いた場合は、既に申告期限を過ぎているため、一刻も早く対応しなければなりません。

【5】ウソを書いた場合はどうなる?

もし「相続税についてのお尋ね」にウソを書いて回答してしまった場合も、そのことだけで罰せられることはありません。しかし後に税務調査が実施されて財産を隠していたと判断されれば、通常の相続税に加えて最大40%の重加算税が課される可能性があります。「お尋ね」に虚偽の回答をしてしまった場合は、速やかに正しい内容で相続税を申告しましょう。相続税の申告内容が適切であればペナルティはありません。

【6】書き方がわからない場合は?

「相続税についてのお尋ね」の文書は、わかりやすく作られています。各項目に財産の金額を記載し、相続財産の総額を計算して、相続税の申告が必要かどうか判断します。どこに何を記載すれば良いかわからない場合は、所轄税務署に電話すれば教えて貰えるでしょう。「お尋ね」の文書の中に所轄税務署の電話番号や担当部署が記載されいるので、そこへ連絡してみましょう!国税局のHPでも書き方のサンプルを公開していますので参考にしてください

【7】相続税の申告をするかどうかはどう判断すれば良いか?

相続税の申告が必要かどうかは、相続した財産の総額が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかどうかで判断します。

相続人は、自分で相続税を申告するかどうかを判断しなければなりません。判断が難しい場合は税務署に相談するか、相続税に詳しい税理士に相談すると良いでしょう。

【8】「評価誤り」や「申告漏れ」があるとペナルティが発生する

相続税の申告で注意しなければならないのは、自身で申告が不要と判断した場合に、その判断が間違っている可能性があるということです。特に多いのは「評価誤り」です。土地の相続税評価額を市町村の固定資産税評価額と同じと考え、申告しなかったケースです。通常、土地の相続税評価額は市町村の固定資産税評価額を上回りますので。ご注意ください!

また誤った判断で相続税を申告せず、後に税務調査で申告漏れが見つかった場合は、本来納めるべき相続税以外に無申告加算税や延滞税などが課されます。

●無申告加算税:15%~20%(税務調査後に申告した場合)

●重加算税:40%(無申告で財産を隠したなど悪質な場合)

●延滞税:所定の納期限から2か月以内は年約3%、2か月を過ぎると年約9%(年により変動)

【9】申告漏れがあったときに取るべき対応とは?

相続発生後数年が経過した後に「相続税のお尋ね」が届いて、相続税の無申告や申告漏れに気がついた場合は、速やかに自主的に申告しましょう。

税務調査で指摘される前であれば、無申告加算税の税率は緩和されます。また、延滞税は納税までの日数に応じて課税されるため、申告と納税が早いほど税額は少なくて済みます。

税務調査が実施されて申告漏れの指摘を受けた場合は、税務署の勧めに従って相続税を申告します。税務署の勧めに応じない場合は、税務署により税額が決定される「更正や決定」が行われます。ただ、例えば更正処分が行われたからと言って、追加で納める相続税が変わるなど不利な取り扱いを受けることはありませんが、手続きにかかる期間が延びることで、延滞税の額が多くなってしまいます。

【10】相続税に詳しい税理士へ相談を!

税務署から「相続税についてのお尋ね」が届くと驚くかもしれませんが、過度に心配する必要はありません。期日までに相続税を申告するか、「相続税申告の簡易判定シート(相続税の申告要否検討表)」で財産の内容を正直に回答すれば良いでしょう!「お尋ね」に回答するために財産を確認した結果、相続税の申告が必要となった場合には、相続税に詳しい税理士に相談することをお勧めします。

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