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税務調査関連Q&A

 
 
Q1. 税務職員が納税者宅に臨場したので、身分証明書等を見せて欲しいと言ったところ、署内に置いてある、携帯を忘れたと答えたのですが、この場合、調査を拒否することはできますか?
Q2. 相続税の調査で、金庫の中を見せて欲しいと言われましたが、これは見せなければならないのでしょうか?
Q3. 故意に隠ぺい又は仮装したものでない場合は、重加算税は課されないのですか?
Q4. 実地の調査の事前通知があったので、書類を見つからないように別居の親族に預けていた場合、納税者が隠ぺい又は仮装の行為をしたことになるのですか?
Q5. 被相続人の普通預金から出金した現金を保管していることは隠ぺいに当たりますか?
Q6. 家族名義預金は仮装に当たりますか?
Q7. 家族名義で預金をしたのは被相続人で、納税者である相続人の行為ではありませんが、納税者が隠ぺい又は仮装の行為をしたことになるのですか?
Q8. 被相続人の死亡後に、貸金庫を開けたところ、子名義、孫名義の預金通帳が多数出てきました。
これらは生前贈与されたものなので相続税とは関係ないと思い申告しませんでしたが、重加算税が課されますか?

Q9. 調査担当者が「質問応答記録書」を作成する意味は、どういうものでしょうか?
Q10. 被相続人名義の預金から相続開直前に多額の出金があることについて、被相続人の預金の出し入れを行っていた配偶者が、キャッシュカードを盗まれたと答弁しました。この答弁は大丈夫でしょうか?

 

 Q1.  税務職員が納税者宅に臨場したので、身分証明書等を見せて欲しいと言ったところ、署内に置いてある、携帯を忘れたと答えたのですが、この場合、調査を拒否することはできますか?

 A  税務職員に対する身分証明書等の提示要請について、税務職員は要請に対しては提示することを義務づけており、これは消極的努力義務という位置づけになります。この提示要請に対して、不携帯その他提示できないようなことであっても、その事自体をもって違法状態であると言えません。

しかし、不携帯という事由により、税務調査を継続することはできません。

署に取りに帰ってくれば良いのであり、提示した後に調査を開始することになります。また複数の税務職員のうち一人だけが不携帯の場合は、当該不携帯職員を除いて他の職員による調査は行うことができます。(国税通則法74条の13)

 

 Q2.  相続税の調査で、金庫の中を見せて欲しいと言われましたが、これは見せなければならないのでしょうか?

 A  相続税の調査は、法人税等の調査と異なり、財産調査が中心となります。金庫自体が、まず誰の所有物か否かを確認する必要があります。その上で、なぜ金庫の中を見せなければならないのかを確認する必要があります。

例えば、相続税の申告書に記載されている財産を個々に確認したいという場合において、金庫の中に通帳等が入っているのであれば、それは自ら出して提示すれば良いのではないでしょうか。仮に、金庫の確認を認めた場合には、納税者自らが中を開けて、一つずつ出して見せれば事足ります。

この場合、税務職員は、金庫や机の引き出しに自ら手を触れることはできません。手を触れると「捜索」になってしまいます。捜索は質問検査権ではありません。

 

 Q3.  意に隠ぺい又は仮装したものでない場合は、重加算税は課されないのですか?

 A  隠ぺい又は仮装に故意を要するというのが通説判例です。ただし、積極的な故意が必要なのではなく、隠ぺい又は仮装の行為は、それが客観的にみて「隠ぺい又は仮装」であることが判断できれば、特段の事情がない限り行為者が隠ぺい又は仮装することを認識していたものと推認できると解されています。

例えば、子供名義で預金するのは、子供の将来のためと考えているので、そのことを積極的に仮装という認識をしている例は少ないと考えられますが、この場合、親はその預金を自分の預金として入出金できることも認識しているのであって、名義人が通帳・印章を保有して自由に処分できるというような特段の事情がない限り、仮装であると判断されます。相続税の名義預金、名義株の重加算税の賦課要件としては、帰属が名義と異なっている場合、原則として仮装の状態にあると解されます。

また隠ぺいとは調査担当者に対する隠ぺいに限られません。遺産分割の対象財産とされることを避けるために他の相続人に対して隠ぺいすることも隠ぺいに当たります。

 Q4.  実地の調査の事前通知があったので、書類を見つからないように別居の親族に預けていた場合、納税者が隠ぺい又は仮装の行為をしたことになるのですか? 

 A  原則として隠ぺい又は仮装の行為は、法定申告期限までに行われたものをいい、法定申告期限後の行為は該当しません。

ただし、調査担当者に見つからないようにしたことが明らかであれば、法定申告期限までの行為と関係しているとして、例えば、申告手続を依頼した税理士の提示の求めに応じなかったことと併せて、隠ぺい行為であったと推認される可能性があります。

 

 Q5.  被相続人の普通預金から出金した現金を保管していることは隠ぺいに当たりますか?

 A  そのことだけで隠ぺいということにはなりません。しかし、相続人が出金手続きをしたにもかかわらず、自分は出金手続きをしていないという事実に基づかない答弁をした後に、現金が発見された場合には、隠ぺいと評価されます。

 

 Q6.  家族名義預金は仮装に当たりますか?

 A  家族名義預金は、形式的には仮装された状態にあると解されます。

 

 Q7.  家族名義で預金をしたのは被相続人で、納税者である相続人の行為ではありませんが、納税者が隠ぺい又は仮装の行為をしたことになるのですか?

 A  隠ぺい又は仮装された状態を利用して過少申告した場合は、本人の行為と取り扱われます。

 

 Q8.  被相続人の死亡後に、貸金庫を開けたところ、子名義、孫名義の預金通帳が多数出てきました。
これらは生前贈与されたものなので相続税とは関係ないと思い申告しませんでしたが、重加算税が課されますか?

 A  過少申告の故意は要件ではなく、結果として過少申告であれば重加算税の課税要件を充足します。しかし、財産の帰属を誤解しただけの場合であれば、相続人名義であることを利用して申告から除外したわけではありませんから重加算税の賦課要件を満たしません。

ところで名義預金が被相続人の預金であることを認識しながら、税金が高くなることを恐れて、税理士に説明しなかった場合ですが、過少申告の故意が明らかです。しかし、過少申告の故意が要件とされているのではなく、この場合、名義人が異なることを利用して名義人に帰属するとしたのであるから、その仮装行為が納税者の行為として重加算税の対象となります。

このような過少申告の故意は、家族名義預金にした被相続人の行為を、納税者の行為と取り扱うこととなる間接的な要件と取り扱われるものですので、独立した重加算税の要件としては、結果としての過少申告の事実で足ります。

 

 Q9.  調査担当者が「質問応答記録書」を作成する意味は、どういうものでしょうか?

 A  預金の出金や入金の事実は、通帳や伝票で確認できますが、それがどういう意図のもとでされたのかは、手続をした者にしか分からないものです。

このように質問応答記録書は、物証(書証)の作成者や、手続きの行為者の認識などを認定するための書面ということになります。これは、調査担当者のために作成しているというように見えるかもしれませんが、交通事故の場合に警察官が見聞調書を作成するように、事実関係の確定を目的としていると解されます。

したがって、裁判における準備書面や審判所に提出する審査請求書のように意見を述べるための書面ではありません。したがってあくまでも事実関係を確定するものとして答弁するように注意すべきです。質問に対する「言い訳」をすることにならないようにする必要があります。質問応答記録書の記載内容を注意深く監視する必要があります。用語の訂正に躊躇しないようにしましょう!「同じことでしょ」という言葉に惑わされてはいけません。実際に言った言葉以外の記載は必ず訂正させることが必要です。

(1)署名押印をしないとしても、放置してはならないことに注意してください。署名押印がなくても公文書として成立するので、証拠として取り扱われるからです。したがって、訂正は必ずすべきです(不利になる場合があります)。

(2)訂正印は文書作成者が押印するのでそのあとに読み聞かせを受けます。

その後に、署名押印をしない申し出をするという順序です。

(3)調査担当者が訂正に応じなかった場合には、それを理由に署名押印を拒否した旨を記載してもらうことが必要です。場合によっては、その記載自体を拒否されることも考えられます。その場合は、書面の作成が適正ではなく訂正を求めたが応じてもらえなかった旨の文書を作成して、税務署長宛に提出し、受付印のある控えを保存してことを考える必要があります。

 

 Q10.  被相続人名義の預金から相続開直前に多額の出金があることについて、被相続人の預金の出し入れを行っていた配偶者が、キャッシュカードを盗まれたと答弁しました。この答弁は大丈夫でしょうか?

 A  その場限りの言い逃れをしないようにしましょう。調査担当者に対する事実に基づかない答弁(虚偽答弁)は、納税者の隠ぺいを推認される可能性があります。

本当にキャッシュカードが盗まれたのであれば、当然警察に盗難届がされているはずですし、金融機関にもキャッシュカード停止の手続きをするはずで、すぐに事実かどうかを調査されるでしょう。一般に事実を述べている場合は、その答術内容が変遷することはありません。